柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

公平性の見本(?)

相手がヒトラーやスターリンならともかく、他人の誕生日や命日といった記念日にわざわざその人を悪く言うのはよほどです*1。良識ある人はそういうことはしないものではないでしょうか。 以下の岩波書店の投稿は少し前のものですが、『ショック・ドクトリン』…

「政府支出」の意味

先日、評論家の池田信夫先生の次のようなツイートを目にしました。前々から気にはなっていたのですが、誰も指摘されないようですので、一言コメントすることにします。 こういうバカも多いが、減税もバラマキなんだよ。ケインズ理論では 政府支出=歳出-税…

『ショック・ドクトリン』の欺瞞

少し告知が遅れてしまいましたが、先日、10mTVよりナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』批判を公表させていただきました*1。 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』は、「新自由主義のショック療法のウソを暴いた」素晴らしい作品として、日…

リカード没後200年

今日は英国の偉大な経済学者リカード没後200周年です。リカードの業績は貨幣理論から公債の中立命題まで非常に多岐にわたりますが、最も有名なのは比較優位の原理に基づく自由貿易論でしょう*1。 貿易パターンを決めるのは絶対的な生産性の高さの違い(絶対…

リカードの手紙から

「他の論争者と同様に、多くの討論を重ねたのち、我々はそれぞれ自分の意見を維持しています。しかし、これらの討論は決して我々の友情に影響するものではありません。私はもしあなたが私の意見に同意してくださっていたとしてもあなたに対して今以上に好意…

田中秀臣先生よりご紹介いただきました!

経済学者でリフレ派の論客として活躍されている田中秀臣先生よりTwitterと文化放送の人気ラジオ番組「おはよう寺ちゃん」(8月1日放送)にて、YCCの柔軟化に関する私のブログ記事のご紹介をいただきました!高く評価してくださり大変光栄です! おかげさまで多…

Happy 111th birthday, Milton Friedman!

今日(7月31日)は、フリードマンの生誕111周年です!少々遅ればせながら、お祝いを‼皆さんも是非この機会に自由主義の偉大な経済学者の著作を手に取っていただければ幸いです! 自由と経済成長について 「文明の偉大な進歩が中央集権的な政府によってもたら…

植田総裁の記者会見雑感

前回の投稿では、28日の日銀総裁定例記者会見での記者の質問について取り上げましたが、今回は植田総裁の説明の中身の方を取り上げたいと思います。 28日の定例記者会見で、植田総裁は、今回のYCC柔軟化をあくまで運用上の見直しであると主張し、「上下双方…

植田総裁に記者が聞くべきだったこと

28日の記者会見といえば別の記者会見の方を思い浮かべる方が多いかもしれませんが*1、日銀総裁の定例記者会見についてお話ししたいと思います。 28日の定例記者会見では、当然ながら、YCCの柔軟化に質問が集中しました。鋭い質問もあったものの*2、記者から…

書評掲載(7/28)

7月28日の『週刊読書人』の特集「<2023年上半期の収穫から>44人へのアンケート」に寄稿した記事が掲載されましたのでお知らせします。ぜひご一読いただければ幸いです。 【特集】2023年上半期アンケート|週刊読書人2023年7月28日号 – 読書人ウェブ …

残念なYCCの”柔軟化”

他の場所できちんと発表したいと思いますので、ここでは取り急ぎ簡潔に書きます。大変残念なことに、YCCの”柔軟化”が決まってしまいました。日銀の政策は、ほぼ日経の報道通りです。日銀は黒田日銀以前のリーク体質に戻ってしまったようです。 長期金利の変…

注意:スクープ報道の信頼度

先ほどの記事、思いのほか多くの方に読んでいただき、ちょっと不用意だったなと反省しています…YCC修正は、現時点では「日経がそう言っている」だけです。私自身、修正が絶対にあるという前提で書いたわけではないのですが、その点の強調が不十分でした。真…

YCC修正?日経のスクープについて

誤報であってほしいと思いますし、そうでないとすれば日銀のコンプライアンス上も問題です。昨晩遅く、日経新聞は、今日開催の日銀金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の修正が議論されると報じました。10年物国債金利の0.5%の上限を超…

安倍元首相の一周忌に寄せて

7月8日は安倍元首相の一周忌でした。安倍元首相が銃撃されて重体というニュースを見た時はとても信じられませんでした。5月16日に政策提言でお話をさせていただく機会があったばかりでしたから尚更です。ご家族や親しいご友人の方の悲しみはいかばかりかと思…

独裁国家が戦争に弱い理由

プーチン大統領はロシア帝国復活を夢見てウクライナ戦争を始めたわけですが、今やロシアは崩壊の危機に立たされています。一党独裁政党の支配に比べ、プーチンのロシアのような個人独裁は政治的に不安定で、戦争に敗北すれば*1崩壊する可能性が高いと考えら…

プリゴジンの反乱に関する雑感

プリゴジン率いる民間軍事会社ワグネルの反乱はあっけなく終わりを迎えたようです。情報が錯綜していますので、軽々しい断定は避けたいと思いますが、今回の反乱についていくつか雑感を書きたいと思います。 昨晩の時点では、ワグネルは殆ど抵抗を受けずに進…

私事に立ち入るべからず

世間のニュースを見ていると、自分には直接関係のない話に、どうしてそこまで関心を持てるのか、不思議になるときがあります。誰が誰と結婚するか、夫婦がどんな姓を名乗るか、どんな性的志向を持っているか、プールで誰を撮影するか*1、どんな漫画、写真そ…

食料品値上がりの自然な対策

食料品の値上げが相次いでいます。こういうとき必ずやり玉に挙がるのが金融政策です。「インフレを目指しているせいで物価が上がる、そのせいで生活が苦しい、すぐ金融緩和をやめて引き締めるべきだ」といった主張を盛んに唱えておられる方がいます。 しかし…

自主規制のダブルスタンダード

最近では、俳優が薬物の使用等の事件を起こすと、あるいは事件ですらない不倫などの問題を起こすと、過去の作品が回収されたり、公開が決まっていた作品が撮り直しになったり公開が中止されたりすることが珍しくありません*1。 問題を起こした人物の出演する…

有名税という名の人権侵害

タレントの不倫とか色恋沙汰はゴシップの話題にはなっても、広告や番組から降ろされたり謝罪会見をさせられたりするような話ではないはずです。有名人であっても私生活は尊重されるべきです。 タレントの広末涼子さんの不倫に対するバッシングのおかしさにつ…

6月の金融政策決定会合

6月15-16日の会合で日銀は金融緩和継続を決めました。緩和継続は、植田総裁の会見や日銀の情報発信から当然予想された結果で驚きではありません。植田総裁は黒田前総裁の政策をみだりに変えたりせず、適切な政策運営をされていると思います。 一部にはサプ…

LGBT理解増進法について

今回は6月16日に成立したLGBT理解増進法を取り上げたいと思います*1。LGBT理解増進法には賛否がありますし、皆さんは様々な意見をお持ちだと思います。どのような意見があっても良いのですが、法案への賛否はともかく、法案が成立すると性犯罪が激増し、「日…

書評掲載(6/6)

この度、『週刊金融財政事情』にブランシャール『21世紀の財政政策』の書評が掲載されましたのでお知らせします。是非ご覧いただければ幸いです。 『21世紀の財政政策 低金利・高債務下の正しい経済戦略』 | きんざいOnline (kinzai-online.jp) ちなみに、ブ…

ESG投資家へのアダム・スミスの忠告

ウクライナ戦争による資源高と経済危機で、ひところ盛んだったESG投資にはここのところ逆風が吹いています。ESG投資の収益は低迷し、日本のESGを謳ったファンドの設立は2022年には2021年の半分以下に減少し、今年も低迷が続いています*1。脱炭素を掲げ、化石…

アダム・スミスの英知

今年6月5日はアダム・スミスの生誕300周年です。スミスは、経済学の父であるだけでなく、偉大な哲学者でもありました。スミスの『道徳感情論』は、『国富論』ほど知られていませんが、人間の共感がいかにして道徳を生み出すかを説いた哲学の古典です。完…

そもそも拙著は「フリードマンをリフレ派にしている」か

私が池田信夫先生に公開書簡*1を書いたのは、意見の相違があるとかそういう問題以前に、私の著作や番組に対する池田先生の評価が基本的な点で事実に反しているからです。今日は拙著への先生のご評価について、いくつか追加的なコメントをさせていただきます…

池田信夫先生からのお返事へのコメント

2月11日、私の出演した番組や本に対して、池田信夫先生からツイッターでご批判をいただきました。先生のご批判には明らかな事実誤認がありましたので、池田信夫先生への公開書簡((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で、反論をさせていただき…

政府支出万能論と不都合な真実

皆様、お久しぶりです。時間の都合と体調不良でしばらく書きませんでしたが、久々に投稿します。今日は経済成長と政府支出の関係についてお話しましょう。 政府支出を増やせば、経済は必ず成長するでしょうか。場合によるとしか言いようがありません。もしそ…

消費停滞への自然な処方箋

5月8日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ5類に移行しました。ひとまずコロナ禍に対する緊急対応は終了し、経済は平常モードに戻ることになりそうです。コロナを恐れた自粛の行き過ぎが消費を冷やしてきた中で、5類…

モンテスキューvs.アマゾンレビュアー(?)

「認めていただけるかわからないが、私には一つお願いがある。それは、少し読んだだけで二十年の仕事を判断しないこと、片言隻句ではなく、この本の全体を是認するなり否認するなりすることである。著者の意図を探ろうとすれば、それはひとえにその著作の意…