柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

自由主義

民主主義を脅かす選挙妨害

衆議院東京15区の補選の選挙妨害が話題になっています。暴力をふるって選挙活動を妨害するのは民主主義を脅かすテロ行為です。興味本位で面白半分にもてはやしたり、自分の嫌いな候補者へのいやがらせなら歓迎したりするのは民主主義を破壊する自殺行為とい…

市場の失敗に関するフリードマンの見解

先日の投稿で市場の失敗について私の述べた見解は、ミルトン・フリードマンの主張とほぼ同じものです。フリードマンは社会主義者や国家主義者にとって、自由主義のシンボル的存在であるようで「市場万能論者だった」などと攻撃されがちですが、実際にはそれ…

市場の失敗をめぐる論争

アルゼンチンのミレイ大統領の言動はリバタリアンの熱い注目を集めていますが、彼が今年2月に米国の「保守政治行動会議(CPAC)」で行った演説は、オーストリア学派経済学のマニフェストというべき内容で大きな話題になりました。 自由主義経済学について紹…

2%と200%の違い

先日はオーストリア学派のレトリックを中途半端に使った増税を支持する議論を批判したので、あるいは誤解があるかもしれませんが、私は別に真面目にオーストリア学派を研究している方に喧嘩を売っているわけではありません*1。私が言いたかったのは単にリバ…

書斎の過激派オーストリアン

小さな政府を支持するリバタリアンを自称する方の中には、何であれ金融緩和に強硬に反対される方がいます。「日銀の不自然な市場への介入のせいで金利が低水準に抑えられると日本経済は大変なことになる」のだそうです。彼らに言わせると、アベノミクスとは…

日本人の資格?

日本で活躍する外国人や帰化した方を執拗に攻撃し、自分が日本人であることをやたらに誇る人たちがいます*1。履歴書を書くときは自分の一番の功績を書くものですが、偶々日本に生まれたことが自分の生涯最大の業績で、それ以外に特に何も誇ることがないとい…

石橋湛山の経済政策思想

2023年は、アダム・スミス生誕300周年、リカード没後200周年、ジョン・スチュアート・ミルの没後150周年という経済学にとって記念すべき年でしたが、日本の経済学者では、石橋湛山の没後50周年でもありました。 石橋湛山は、戦前は東洋経済新報社のジャーナ…

ミル没後150周年

2023年はジョン・スチュアート・ミルの没後150周年でしたが*1、今年は特に自由の意義を改めて考えさせられた1年でした。 2020年の米国大統領選後から顕著になっていた現象ですが、今年はネットを中心に一部の過激な集団が根拠のないデマをもとに迷惑行為を繰…

「資本主義のど真ん中」

以下のようなポストを見かけました。19.2万回表示されていて、1663件も「いいね」がついていますから、それなりに読まれているのでしょう。 奴隷関連の調べ物を。ここ数年で一気に増えつつある文献の頁を繰れば繰るほど、資本主義のど真ん中に奴隷制が鎮座し…

自称愛国者はCMに夢中

自称愛国者の皆さんの排外主義的言動を見ていてつくづく疑問なのは、それが何の役に立つのかです*1。ここ最近では、Xでアンミカさんにかかわるワードが何度もトレンド入りしていましたが、日本が抱えている最大の問題は日清のCMなのでしょうか?彼らが常日頃…

ベネズエラの21世紀の帝国主義

社会主義者は、資本家が戦争を起こすという陰謀論を唱えることが少なくありません。極左の政治学者によれば、イラク戦争をはじめとする米国の中東への介入も石油支配を目的とした戦争であるそうです。 もしそうした説明が本当なら、戦争は資本主義の産物で、…

嫌韓ヒステリーは百害あって一利なし

12月6日から始まったアンミカさんの「日清のどん兵衛」シリーズのウェブCMが一部の極右の方に攻撃されています。XにこのCMに関係するトレンドが毎日のように出ているのは本当にうんざりしますし、これこそまさに日本の恥です。 アンミカさんが「日本は世界の…

被害者責任論を説く人たち

最近のSNS上の国際政治の専門家への中傷や嫌がらせは度を超えています。議論の内容以前の問題として、意見の違う相手だからといって、嫌がらせをしたりしてよいはずがないでしょう。 年度末に向け、いくつも重要プロジェクトが控えていますが、悪質な嫌がら…

”正義”の暴走

当たり前すぎて本来は言う必要もないことのはずですが、意見の相違は犯罪を正当化しません。自分の気に入らない人間に物理的な危害を加える人は本人が自分のことをどう思っていようと単に犯罪者です。 人間の考え方は様々ですし、物事の判断は難しいこともあ…

週刊読書人インタビュー『本当に役立つ経済学全史』刊行を機に

少しお知らせが遅くなりましたが、『週刊読書人』11月24日号にて、『本当に役立つ経済学全史』の刊行記念インタビューを掲載していただきました。経済学における自由主義の伝統の重要性、マルクスと古典派の関係、陰謀論的なナチス礼賛言説の危険性など、拙…

No Place for Antisemitism

10月7日のテロ組織ハマスによるイスラエルへの無差別テロはショッキングなものでした。多くの一般市民が残忍な方法で殺害されたことには憤りを禁じ得ません。残念なことに、日本でも欧米でも、パレスチナ問題を理由に、今回のテロを肯定したり容認したりする…

『ショック・ドクトリン』の欺瞞

少し告知が遅れてしまいましたが、先日、10mTVよりナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』批判を公表させていただきました*1。 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』は、「新自由主義のショック療法のウソを暴いた」素晴らしい作品として、日…

リカード没後200年

今日は英国の偉大な経済学者リカード没後200周年です。リカードの業績は貨幣理論から公債の中立命題まで非常に多岐にわたりますが、最も有名なのは比較優位の原理に基づく自由貿易論でしょう*1。 貿易パターンを決めるのは絶対的な生産性の高さの違い(絶対…

リカードの手紙から

「他の論争者と同様に、多くの討論を重ねたのち、我々はそれぞれ自分の意見を維持しています。しかし、これらの討論は決して我々の友情に影響するものではありません。私はもしあなたが私の意見に同意してくださっていたとしてもあなたに対して今以上に好意…

Happy 111th birthday, Milton Friedman!

今日(7月31日)は、フリードマンの生誕111周年です!少々遅ればせながら、お祝いを‼皆さんも是非この機会に自由主義の偉大な経済学者の著作を手に取っていただければ幸いです! 自由と経済成長について 「文明の偉大な進歩が中央集権的な政府によってもたら…

自主規制のダブルスタンダード

最近では、俳優が薬物の使用等の事件を起こすと、あるいは事件ですらない不倫などの問題を起こすと、過去の作品が回収されたり、公開が決まっていた作品が撮り直しになったり公開が中止されたりすることが珍しくありません*1。 問題を起こした人物の出演する…

有名税という名の人権侵害

タレントの不倫とか色恋沙汰はゴシップの話題にはなっても、広告や番組から降ろされたり謝罪会見をさせられたりするような話ではないはずです。有名人であっても私生活は尊重されるべきです。 タレントの広末涼子さんの不倫に対するバッシングのおかしさにつ…

LGBT理解増進法について

今回は6月16日に成立したLGBT理解増進法を取り上げたいと思います*1。LGBT理解増進法には賛否がありますし、皆さんは様々な意見をお持ちだと思います。どのような意見があっても良いのですが、法案への賛否はともかく、法案が成立すると性犯罪が激増し、「日…

アダム・スミスの英知

今年6月5日はアダム・スミスの生誕300周年です。スミスは、経済学の父であるだけでなく、偉大な哲学者でもありました。スミスの『道徳感情論』は、『国富論』ほど知られていませんが、人間の共感がいかにして道徳を生み出すかを説いた哲学の古典です。完…

モンテスキューvs.アマゾンレビュアー(?)

「認めていただけるかわからないが、私には一つお願いがある。それは、少し読んだだけで二十年の仕事を判断しないこと、片言隻句ではなく、この本の全体を是認するなり否認するなりすることである。著者の意図を探ろうとすれば、それはひとえにその著作の意…

減税vs.政府支出:なぜ減税が望ましいか

積極財政派の政治家は少なくありませんが、その多くは政府支出を増やすことに積極的であっても、減税にはあまり積極的ではないようです。減税も政府支出拡大もどちらも財政政策なのですが、なぜか人気があるのは公共事業等の政府支出拡大です*1。実際には、…

ヴォルテールの言葉より

「寛容とはなんであるか。それは人類愛の領分である。我々はすべて弱さと過ちから作りあげられている。われわれの愚行を互いに許しあおう。これが自然の第一の掟である。」-ヴォルテール*1 これはフランスの哲学者ヴォルテールの言葉です。宗教上の不寛容を…

軽薄な極右人権活動家

騒いでいるのは大部分は選挙区外に住む無関係な方だと思いますし、千葉県民は良識を持った判断を下されるでしょうけれども、あまりにひどいので繰り返しになりますが千葉5区の選挙について投稿します。 さて、今回は、ウイグルの人権問題に関するデマを取り…

匿名陰謀論者の自己矛盾

私ももうそろそろうんざりしているのですが、千葉5区補選の話題です。選挙は明日ですから、もう少しお付き合い願いましょう。 火のないところに煙を立てる陰謀論者の才能は実に驚くべきものです。もっと別のことに使っていたらさぞ役に立ったでしょう。 立候…

民主主義の大切さ

昨今流行りの本が何と言おうと、選挙なしの民主主義はあり得ません。22世紀の民主主義であろうと23世紀の民主主義であろうとそれは変わりないでしょう。 今はちょうど統一地方選、衆参補選のさなかですが、政治に参加し、自らの権利を行使することは大変大切…