柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

軽薄な極右人権活動家

騒いでいるのは大部分は選挙区外に住む無関係な方だと思いますし、千葉県民は良識を持った判断を下されるでしょうけれども、あまりにひどいので繰り返しになりますが千葉5区の選挙について投稿します。

さて、今回は、ウイグルの人権問題に関するデマを取り上げましょう。右翼の方の中には、「えりアルフィヤ氏はウイグル系なのに、ウイグルの人権問題に一言も触れようとしない」*1なるデマを広めている方がたくさんいます。

ほんの少しでも調べれば、これが酷い中傷であることはすぐわかるでしょう。以下のように書いている人がどこをどう読めばそんな風に見えるのでしょうか。

今のウイグルの状況を見ると、〈…中略…〉言葉にできないほどの悲惨な弾圧と人権侵害が起こっていることが明確です。

だからこそ私は、日本に生まれ、自分を「アルフィヤ」と名乗る尊厳を与えられた日本人として、何よりも先に我が国日本の主権と領土・領空・領海を守り抜くことが大切だと考えています。*2

昨年の参院選中の読売新聞の候補者アンケートでは、「欧米は、中国の新彊ウイグル地区での人権弾圧を受けて、中国への制裁措置を発動しています。日本政府が中国に制裁を発動することに賛成ですか、反対ですか。」という質問に「賛成」とはっきり答えておられますし、同じことをブログでも主張しています*3

本人も書いている通り*4、えりアルフィヤ氏はブログやTwitter、インタビュー等でもウイグル人権問題について継続的に情報を発信されています。例えば、2022年9月には、「食糧・医療ケアが与えられない「ゼロコロナロックダウン」(実質上の自宅監禁)によるウイグル人市民の餓死・自殺」の問題を強く訴え、人道上の危機を救うよう国際社会に呼び掛けています*5。「ウイグル」をただ単に中国を罵倒し、日本に住む中国人への嫌がらせの口実としている人たちがこういう話題をご存じないのは無理からぬことかと思いますが、これはSAKISIRUの記事にも取り上げられています*6

誰がどう見てもウイグルの人権問題に対して深い関心を持っておられることは明らかでしょう。もちろん、今回の選挙戦でも、候補者第一声からウイグル問題に触れておられますし、人権外交の重要性を強調されています。

「わが国にはいま、力強いこの国を守る姿勢、勇気のある政治が必要だと思っています。…私自身ルーツが、ウイグルという場所にあります。ウイグルは民族の主権、領土の主権、言語の主権、このようなものを失ってしまった場所です。〈…中略…〉市川・浦安のために、そしてわが国の現在のために、未来のために、力強い外交安全保障のために、お力をお貸しください。」*7

よほど偏見で曇っていない限り、えりアルフィヤ氏の立場は誰の目にも明らかだと思うのですが、いかがでしょうか。

「なぜウイグルについて話すのを避けているのか。説明をお願いします」などといっている方を見かけますが*8、あなたは一体どこを見ているのですかと逆に聞き返したいところです。

候補者について最低限のことも調べもしないで、そんなことを聞くのは失礼ですし、デマの拡散と変わりません。いい加減な「疑問」なんか口にする暇があったら、調べたらいかがですか。本人が既に何度も話していることについて「ウイグル問題についてあの人は何も言っていないですね。話すのを避けているようですが、なぜですか?」などという”疑問”を書くのは、ただの嫌がらせです。

それにしても、極右の方々は常日頃はウイグル問題を持ち出して中国を非難していますが、その言葉のなんと軽いことでしょうか。さんざん持ち上げておいて、いざウイグル系の方が立候補すると、今度は酷い誹謗中傷を書いて袋叩きにするなんて一体どういうことでしょうか。結局、彼らの「ウイグル」は単に中国人差別の口実に過ぎないのだと思われても仕方ないでしょう。そういう態度は真面目に人権問題に取り組んでいる方に失礼ですし、いまも人権侵害に苦しんでいる方々に対する冒涜です。

*1:同じような発言はうんざりするほどたくさんありますが、一例として、漫画家の東雲くによし(孫向文)氏の発言を紹介します。

自民党の、ウイグル系中国系帰化人えりアルフィヤさんが中国共産党が同族のウイグル人にジェノサイドに関する発言は一度もありません、このような冷血な人は日本の選挙に出馬するの神国日本への冒涜です、国籍を剥奪して中国に帰らせるべきです」(東雲くによし(孫向文)氏のTwitter, 2023年4月14日,URL:https://twitter.com/sonkoubun/status/1646802513298096128)。

*2:名前を失うということ | 英利アルフィヤ(えりアルフィヤ) 公式ホームページ (eri-arfiya.jp)

*3:以前の私の投稿をご覧ください。2022年11月の参院人権決議の際には、「中国」や「人権侵害」といった言葉が明記されなかったことについても強く抗議しています(えりアルフィヤ氏のTwitter, 2022年11月30日)。普通の読解力があれば、中国政府に対して一貫した厳しい姿勢をとっているのがわかります。

*4:えりアルフィヤ氏のTwitter, 2022年8月17日. URL:https://twitter.com/eri_arfiya/status/1559794238329868289のスレッドをご覧ください

*5:えりアルフィヤ氏のTwitter, 2022年9月14日.

URL:https://twitter.com/eri_arfiya/status/1569950114122461186?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1569950114122461186%7Ctwgr%5E1671639a1189fdfe6f068a5df18367fc9edbc2f3%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fsakisiru.jp%2F36232

*6:長期ロックダウン中の新疆ウイグル自治区で餓死者も…人権団体が訴える「絶望的惨状」 – SAKISIRU(サキシル)

*7:衆議院千葉5区補欠選挙告示 候補者第一声 初日に何を語った? | NHK

*8:例えば、ジャーナリストの三枝玄太郎氏は「えりアルフィヤさん、ラスト1週間で中国によるウイグル抑圧は積極的に言及すべきだと思います。この話題を避けていると、お父様がニトリの役員の話も事実のようですし「ああ、やっぱりね」と思われてしまうのは仕方ないと思います。」(三枝玄太郎氏のTwitter, 2023年4月17日, URL:https://twitter.com/SaigusaGentaro/status/1647735959684022273)なる“アドバイス”をしておられます。本人がこれ以上にないくらい明確にウイグル問題について何度も話しているというのに、「この話題を避けている」とはいったいどういう意味でしょうか。

ちなみに、この方はTwitterで「ウイグルの方に聞いたんですけれど、やはりえりアルフィヤさんをウイグルサイドの人とは見ていませんね。中国共産党側という認識でした、その人は。」と書いていた方です(既に削除済み)。ウイグル系の公的な団体や個人はみな歓迎しこそすれ、否定的な評価をしている人など皆無に等しいのですが、「ウイグルの方」とは誰なのでしょうね。

自分自身がデマと受け取られても仕方ない情報を広めておいて、こんな”アドバイス”はありえないのではないですか。