柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

民主主義を脅かす選挙妨害

衆議院東京15区の補選の選挙妨害が話題になっています。暴力をふるって選挙活動を妨害するのは民主主義を脅かすテロ行為です。興味本位で面白半分にもてはやしたり、自分の嫌いな候補者へのいやがらせなら歓迎したりするのは民主主義を破壊する自殺行為とい…

間違いを認める大切さ

いくら注意していても、間違った意見を言ってしまうことは誰にでもあることです*1。大切なのは間違いに気が付いた後の対応です。当たり前のことですが、きちんとお詫びし、訂正するのが大切だと思います。反対に、間違いがわかった後も、間違っていないと自…

お詫びと訂正

先日の記事(1,2)では、大林ミカ氏の背後に中国の朱鎔基元首相の写真が飾ってある写真について取り上げ、一部の極右が流している主張はデマである可能性が高いと指摘しました。これについて、4月8日、自然エネルギー財団から発表がありました。 「ネット上で…

市場の失敗に関するフリードマンの見解

先日の投稿で市場の失敗について私の述べた見解は、ミルトン・フリードマンの主張とほぼ同じものです。フリードマンは社会主義者や国家主義者にとって、自由主義のシンボル的存在であるようで「市場万能論者だった」などと攻撃されがちですが、実際にはそれ…

市場の失敗をめぐる論争

アルゼンチンのミレイ大統領の言動はリバタリアンの熱い注目を集めていますが、彼が今年2月に米国の「保守政治行動会議(CPAC)」で行った演説は、オーストリア学派経済学のマニフェストというべき内容で大きな話題になりました。 自由主義経済学について紹…

陰謀論者の写真をめぐる空想

4/12追記:大林ミカ氏の背後に中国の朱鎔基元首相の写真が飾ってある写真について、4月8日、自然エネルギー財団から発表がありました。 「ネット上で、大林事業局長の背後に中国の朱鎔基首相の写真が飾ってある写真が取り沙汰されていますが、この写真は、日…

極右陰謀論お断り

内閣府の再エネタスクフォースの大林ミカ氏の資料に中国の国営企業である中国国家電網のロゴが見つかった問題が白熱した議論を呼んでいます。私自身、再エネ政策には批判的で、市場を歪める再エネ買取制度は廃止すべきというのは常々言ってきたところですか…

池田先生のコメントへのコメント

評論家の池田信夫先生から以下のようなコメントをいただきましたので、一応お答えさせていただきます。 正直、これには驚きました。池田先生は学界の事情に詳しい権威ある学者なんでしょうけれども、これはとても学識あるコメントとは言えないのではありませ…

大規模金融緩和終了の評価

3月の日銀の金融政策決定会合については、既に他の所でも書いていますが、簡単な評価をこちらにも書いておきたいと思います。 会合が始まる前から様々なメディアがマイナス金利解除をあたかも確報であるかのように報じていましたが、予想通り、日銀はYCCの撤…

リーク報道の”正常化”に反対する

前回の投稿でも書きましたが、3月18-19日の日銀金融政策決定会合では、会合前や会合のさなかにリークが疑われるような詳細な政策変更に関する報道が相次いでいました*1。残念なことに、昨日の金融政策決定会合で発表された日銀の方針は正に事前の報道通りの…

金融政策のスクープ報道への疑問

3月に入ってから様々なメディアがマイナス金利解除を連日のように報じています。金融政策決定会合は今日からですし、日銀は何も公的に発表していないはずなのですが、どんな情報源から情報を得たのか、既にマイナス金利解除は確実な話であるかのような報道ぶ…

ブログ1周年

昨日でブログ1周年でした。すぐにネタが尽きて終わるかと思いきや、意外と続いていて自分でも不思議です(笑)。これも読者の皆様の応援のおかげです。ブログ更新の告知などをしているXも多くの方にフォローしていただき嬉しく思っております。 経済から人権…

男女平等と規制改革

3月8日は国際女性デーでした。日本では(というか日本に限らず多くの国でもそうですが)、女性の権利を支持し男女平等を主張する人は大きな政府を支持しがちです。逆に小さな政府の支持者は、そうした運動を疑いの目で見ている場合が多く、男女平等はすでに実…

お詫びと訂正

先日の記事では、男女共同参画センターの予算に触れたのですが、一部で男女共同参画センターの予算が10兆円などと騒がれているのはデマですよ、というお話をしました。 ところが、全く情けない話ですが、タイトルで「男女共同参画センター」と書くべきところ…

観光税の負担

3月6日、大阪府の吉村洋文知事が、オーバーツーリズム対策として訪日外国人客を対象とした徴収金の導入を検討すると発表しました*1。大阪・関西万博が開幕する25年4月をめどに導入する方針とのことです。大阪府は既に宿泊税を2017年から導入していますが、宿…

投資詐欺と経済学の常識

著名人の名前を騙った投資詐欺が流行っているようです。 投資詐欺が急増!名前悪用された有名人も注意呼びかけ|NHK 北海道のニュース 私が親しくさせていただいている先生方も勝手に名前を使われて被害に遭われていますが、SNS運営側もさっさと取り締まって…

男女共同参画センターをめぐる誤解

自分にとって好都合な情報ばかりに飛びついていると、陰謀論的な思考に陥ってしまいがちです。主張の結論が心地良いかどうかではなく、情報の真偽をきちんと判断することが重要です。今回はその好例と言える以下の事例を取り上げたいと思います。 男女共同参…

大谷選手の私生活は「コモン」か?

有名人であれ誰であれプライベートでどんなことをしていようと自由であるはずです。仕事に関係ないことの公開を求められたり詮索を受けたりする義務はありません。他人の私生活に土足で入ってくる人たちには本当に嫌になります。 斎藤幸平東京大学准教授*1の…

書評『プラトンが語る正義と国家 不朽の名著・『ポリテイア(国家)』読解』

拙著『本当に役立つ経済学全史』を出版させていただいたテンミニッツTVの講義録シリーズから、この度、第2弾として納富信留先生のプラトンの『ポリテイア(国家)』の解説書が出ましたので、ご紹介させていただきます。 プラトンが語る正義と国家 不朽の名著…

陰謀論の無意味さ

陰謀論や人種差別に熱中する方々を見ていて、いつも疑問に思えてならないのは、それがあなたの人生に一体何の役に立つのですかということです。 例えば、プーチン大統領やらトランプ前大統領やら何とかやらが正義の味方だとか光の戦士とかだとして、だからど…

書評掲載(2/16)

少しお知らせが遅くなりましたが、週刊読書人2月16日号に、池尾愛子著『天野為之 日本で最初の経済学者』(ミネルヴァ書房)の書評を掲載させていただきました。ぜひご一読いただければ幸いです! 天野為之は、福沢諭吉や田口卯吉と並び明治日本の3大経済学…

2%と200%の違い

先日はオーストリア学派のレトリックを中途半端に使った増税を支持する議論を批判したので、あるいは誤解があるかもしれませんが、私は別に真面目にオーストリア学派を研究している方に喧嘩を売っているわけではありません*1。私が言いたかったのは単にリバ…

岸田首相のスピーチ雑感

岸田首相が「共生社会と人権に関するシンポジウム」(2月3日開催)に寄せたビデオメッセージ が一部の右翼の方に激しく批判されているようです。何でも、「日本は差別が少ない国なのに、差別が多い国だと誤解される」のが問題なんだそうです。私からのアドバイ…

書斎の過激派オーストリアン

小さな政府を支持するリバタリアンを自称する方の中には、何であれ金融緩和に強硬に反対される方がいます。「日銀の不自然な市場への介入のせいで金利が低水準に抑えられると日本経済は大変なことになる」のだそうです。彼らに言わせると、アベノミクスとは…

日本人の資格?

日本で活躍する外国人や帰化した方を執拗に攻撃し、自分が日本人であることをやたらに誇る人たちがいます*1。履歴書を書くときは自分の一番の功績を書くものですが、偶々日本に生まれたことが自分の生涯最大の業績で、それ以外に特に何も誇ることがないとい…

万博中止論について

能登半島地震で、大阪・関西万博中止論が盛り上がっています。能登半島地震の被害は甚大だから、万博を中止して、建設業のリソースを震災復興に充てるべきだという議論です。これに関しては、飯田泰之先生が既に素晴らしい記事を書いておられますので、ぜひ…

関東大震災の教訓(3)

いつの時代にも、災害が起きた際に、どさくさに紛れて外国人への憎悪を扇動する人がいるものです。能登半島地震でもデマを流したりして排外主義を煽る人もいるだろうと覚悟はしていました*1。それにしても、次のような実名のポストを見たときは、さすがにび…

似非科学的な言葉遣いについて

最近、「境界知能」という言葉を自分が嫌いな相手を罵倒する言葉として使っている方が見受けられます。特に特定の政党や政治的傾向を持つ方に対する罵倒として「境界知能」を使う方が目立ちますが、全く感心しない風潮です。きちんとした定義がある専門用語…

関東大震災の教訓(2)

前回の投稿では、関東大震災の経済政策についてお話ししました。誤解のないようここでも再度強調しますが、私の投稿の趣旨はあくまでも関東大震災の際の迅速な経済対策とその方向性(増税ではなく減税)への評価です。当時の政府への高い評価を意味している…

関東大震災の教訓(1)

令和6年能登半島地震の被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。私事になりますが、私も北陸に暮らしたことがあり、慣れ親しんだ地域の惨状に大変ショックを受けています。一日も早い復興を願ってやみません。 1月4日、こんなことを議論するのは少し早…