柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

金融政策

池田先生のコメントへのコメント

評論家の池田信夫先生から以下のようなコメントをいただきましたので、一応お答えさせていただきます。 正直、これには驚きました。池田先生は学界の事情に詳しい権威ある学者なんでしょうけれども、これはとても学識あるコメントとは言えないのではありませ…

大規模金融緩和終了の評価

3月の日銀の金融政策決定会合については、既に他の所でも書いていますが、簡単な評価をこちらにも書いておきたいと思います。 会合が始まる前から様々なメディアがマイナス金利解除をあたかも確報であるかのように報じていましたが、予想通り、日銀はYCCの撤…

リーク報道の”正常化”に反対する

前回の投稿でも書きましたが、3月18-19日の日銀金融政策決定会合では、会合前や会合のさなかにリークが疑われるような詳細な政策変更に関する報道が相次いでいました*1。残念なことに、昨日の金融政策決定会合で発表された日銀の方針は正に事前の報道通りの…

金融政策のスクープ報道への疑問

3月に入ってから様々なメディアがマイナス金利解除を連日のように報じています。金融政策決定会合は今日からですし、日銀は何も公的に発表していないはずなのですが、どんな情報源から情報を得たのか、既にマイナス金利解除は確実な話であるかのような報道ぶ…

2%と200%の違い

先日はオーストリア学派のレトリックを中途半端に使った増税を支持する議論を批判したので、あるいは誤解があるかもしれませんが、私は別に真面目にオーストリア学派を研究している方に喧嘩を売っているわけではありません*1。私が言いたかったのは単にリバ…

書斎の過激派オーストリアン

小さな政府を支持するリバタリアンを自称する方の中には、何であれ金融緩和に強硬に反対される方がいます。「日銀の不自然な市場への介入のせいで金利が低水準に抑えられると日本経済は大変なことになる」のだそうです。彼らに言わせると、アベノミクスとは…

田中秀臣先生よりご紹介いただきました!

経済学者でリフレ派の論客として活躍されている田中秀臣先生よりTwitterと文化放送の人気ラジオ番組「おはよう寺ちゃん」(8月1日放送)にて、YCCの柔軟化に関する私のブログ記事のご紹介をいただきました!高く評価してくださり大変光栄です! おかげさまで多…

植田総裁の記者会見雑感

前回の投稿では、28日の日銀総裁定例記者会見での記者の質問について取り上げましたが、今回は植田総裁の説明の中身の方を取り上げたいと思います。 28日の定例記者会見で、植田総裁は、今回のYCC柔軟化をあくまで運用上の見直しであると主張し、「上下双方…

植田総裁に記者が聞くべきだったこと

28日の記者会見といえば別の記者会見の方を思い浮かべる方が多いかもしれませんが*1、日銀総裁の定例記者会見についてお話ししたいと思います。 28日の定例記者会見では、当然ながら、YCCの柔軟化に質問が集中しました。鋭い質問もあったものの*2、記者から…

残念なYCCの”柔軟化”

他の場所できちんと発表したいと思いますので、ここでは取り急ぎ簡潔に書きます。大変残念なことに、YCCの”柔軟化”が決まってしまいました。日銀の政策は、ほぼ日経の報道通りです。日銀は黒田日銀以前のリーク体質に戻ってしまったようです。 長期金利の変…

注意:スクープ報道の信頼度

先ほどの記事、思いのほか多くの方に読んでいただき、ちょっと不用意だったなと反省しています…YCC修正は、現時点では「日経がそう言っている」だけです。私自身、修正が絶対にあるという前提で書いたわけではないのですが、その点の強調が不十分でした。真…

YCC修正?日経のスクープについて

誤報であってほしいと思いますし、そうでないとすれば日銀のコンプライアンス上も問題です。昨晩遅く、日経新聞は、今日開催の日銀金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の修正が議論されると報じました。10年物国債金利の0.5%の上限を超…

食料品値上がりの自然な対策

食料品の値上げが相次いでいます。こういうとき必ずやり玉に挙がるのが金融政策です。「インフレを目指しているせいで物価が上がる、そのせいで生活が苦しい、すぐ金融緩和をやめて引き締めるべきだ」といった主張を盛んに唱えておられる方がいます。 しかし…

6月の金融政策決定会合

6月15-16日の会合で日銀は金融緩和継続を決めました。緩和継続は、植田総裁の会見や日銀の情報発信から当然予想された結果で驚きではありません。植田総裁は黒田前総裁の政策をみだりに変えたりせず、適切な政策運営をされていると思います。 一部にはサプ…

植田日銀初の金融政策決定会合

4月27・28日には植田総裁の下で最初の金融政策決定会合が開かれました。報道は相変わらずで「政策修正へ」という先走った見方が多いようですが、今回の会合では、植田総裁はむしろ黒田前総裁の路線を引き継ぐことを明示したといえるでしょう。 今回の金融政…

植田新日銀総裁がまずすべきこと

4月9日、植田和男氏が日銀総裁に就任し、今日は就任後最初の記者会見[1]が開かれました。植田総裁の会見は副作用に配慮しつつ現行の金融緩和を継続するという趣旨の無難な答弁に終始し、新しい情報は殆どありませんでした。結局、植田総裁がどういう方針をと…

黒田総裁の退任

今日、黒田東彦日銀総裁が退任されました。10年間、消費増税やコロナ禍といった大きな逆風に見舞われながらも、日本経済を支えてきた功績は大変大きいと思います。 昨日の最後の記者会見で黒田総裁自身が指摘されたように、量的・質的金融緩和により、日本は…

Money Matters

昨日の日経新聞に、欧米の金融不安が長引く可能性を指摘した記事が出ていました。 金融不安、長期化の恐れ 世界に残る危機の芽 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 貨幣的要因を軽視する見方が多い中で、米国の広義の貨幣量(M2)の急激な減少に警鐘を鳴らす記事の内…

当然ながら金融政策は「全て」ではない

私は黒田東彦日銀総裁の下で始まった量的・質的金融緩和が景気に大きな影響を与えてきたことを評価する立場ですが、金融政策というのは多くの方にとっては縁遠い話題でしょう。金融政策についてお話ししても、大抵はあまり強い反応をいただくことはありませ…

読書人WEB記事掲載(3/31)

週刊読書人3月10日号の岩田規久男先生と私の対談<中央銀行は誰のものか>から、本編未収録の記事を番外編として読書人WEBで公開していただきました。ぜひご一読いただければ幸いです。 【読書人WEB限定】対談=岩田規久男×柿埜真吾|日銀新執行部発足を控え…