柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

残念なYCCの”柔軟化”

他の場所できちんと発表したいと思いますので、ここでは取り急ぎ簡潔に書きます。大変残念なことに、YCCの”柔軟化”が決まってしまいました。日銀の政策は、ほぼ日経の報道通りです。日銀は黒田日銀以前のリーク体質に戻ってしまったようです。

長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10 年物国債金利について 1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。

という文言は曖昧過ぎてどのような意図なのか理解するのが困難です。「目途」や「柔軟に」とは正確にはどういう意味でしょうか。指値オペを0.5%でなく1%の利回りでやるのは利上げと受け取られても仕方ないでしょう。しかし全てが曖昧で、本石町文学の専門家以外は読み解くことができないどうとでも取れる中身に思えます。

今回の決定会合では、フォワドガイダンスやオーバシュート型コミットメントの部分は前回と同じでしたが、「粘り強く金融緩和を継続していく」と言いながら3か月で方針を変えるのでは信認が揺らいで当然です。

YCCを修正しても2%インフレを目指す方針は不変であることを説得的に示すようなコミットメントの強化が必要ではないかと思いますが、今回の公表文にはそうした文言が加えられることもありませんでした。このままなし崩し的に引き締めに向かう可能性も否定できません。今後のYCCの運用次第ではありますが、いったん失われた信認を取り戻すのはなかなか難しいでしょう。これまでの日銀の説明からは今回の方針の変更は理解困難ですし、正当化するのは極めて難しいと思います。