柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

6月の金融政策決定会合

6月15-16日の会合で日銀は金融緩和継続を決めました。緩和継続は、植田総裁の会見や日銀の情報発信から当然予想された結果で驚きではありません。植田総裁は黒田前総裁の政策をみだりに変えたりせず、適切な政策運営をされていると思います。

一部にはサプライズのYCC修正を予想した向きもあったようですが、前回の金融政策決定会合で「粘り強く金融緩和を継続していく」と約束したばかりの植田日銀が6月に即座に政策修正に踏み切るとすれば、日銀への信認を大きく損なったでしょう。現在の状況は基本的に4月の展望レポートの見通しから大きく外れていません。消費者物価に本格的な影響が出るまでにはまだ時間がかかるでしょうが、資源価格は下落気味ですし、国際的な資源高に伴うコストプッシュインフレは落ち着きつつあります。緩和修正を迫るようなデータは特にないのですし、7月に新しい展望レポートが出るタイミングであればまだしも6月緩和修正は最初からあり得ない選択肢だったと思います。

早期修正を予想した方々は、植田総裁の本心は反リフレ派で、早期引き締めを望んでいるはずだという先入観があるのではないでしょうか。ですが、就任が決まって以降の植田氏の発言を見る限り、黒田路線継承の姿勢を鮮明にしていますし、そうした推測を裏付ける客観的根拠は乏しいと思います*1

なお、会合終了後の植田総裁の記者会見の片言隻句を切り取って、次回引き締めが確定したかのように書いている方もいるようですが、記者会見は全体の印象としてかなりハト派的でしたし、大きなショックが起きない限り、当面は緩和的な政策が続くと予想するのが妥当ではないでしょうか。何はともあれ、緩和継続が決まったのは良かったですし、ぜひ今の路線を続けていただきたいと思います。

*1:なお、どういうわけなのか、黒田前総裁には辛辣だったのに、植田総裁には好意的な方もいるようですが、私にはその理由がわかりかねます。「植田総裁は黒田前総裁のようなリフレ派ではなくハト派」で、黒田総裁とは「頭の中」は全然違うのだというのですが、植田総裁は黒田前総裁の始めた政策を続けています。やっていることは同じなのですから、やっている人の違いで評価を変えるのはおかしいのではないでしょうか。もちろん、同じ政策でも「リフレ派」ではなくて「ハト派」と呼べば受け入れてくださるのでしたら、それはそれで結構な話ですが。