柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

関東大震災の教訓(2)

前回の投稿では、関東大震災の経済政策についてお話ししました。誤解のないようここでも再度強調しますが、私の投稿の趣旨はあくまでも関東大震災の際の迅速な経済対策とその方向性(増税ではなく減税)への評価です。当時の政府への高い評価を意味している…

関東大震災の教訓(1)

令和6年能登半島地震の被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。私事になりますが、私も北陸に暮らしたことがあり、慣れ親しんだ地域の惨状に大変ショックを受けています。一日も早い復興を願ってやみません。 1月4日、こんなことを議論するのは少し早…

石橋湛山の経済政策思想

2023年は、アダム・スミス生誕300周年、リカード没後200周年、ジョン・スチュアート・ミルの没後150周年という経済学にとって記念すべき年でしたが、日本の経済学者では、石橋湛山の没後50周年でもありました。 石橋湛山は、戦前は東洋経済新報社のジャーナ…

原田泰先生より『本当に役立つ経済学全史』をご紹介いただきました!

『週刊エコノミスト』2024年1月9日・16日号にて、原田泰先生より『本当に役立つ経済学全史』をご紹介いただきました! Book Review:経済学は論争と検証の歴史 現代に“役立つ”成果を紹介 評者・原田泰 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp) 本書は現代の…

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願いいたします。 昨年は本当にたくさんの方にお世話になりました。お世話になった先生方、様々なイベントに来てくださった皆様、読者の皆様に心より御礼申し上げます。 新年早々に令和6年能登半…

ミル没後150周年

2023年はジョン・スチュアート・ミルの没後150周年でしたが*1、今年は特に自由の意義を改めて考えさせられた1年でした。 2020年の米国大統領選後から顕著になっていた現象ですが、今年はネットを中心に一部の過激な集団が根拠のないデマをもとに迷惑行為を繰…

よいお年を!

いよいよ2023年も今日で終わりですね。2023年は皆さんにとってどんな一年でしたか。 経済に関しては、年初には様々な懸念材料がありましたが、意外に悪くない一年だったといえるでしょう。米国経済が予想以上に堅調で、日本経済も30年ぶりの大幅な春闘賃上げ…

岩田規久男先生より『本当に役立つ経済学全史』をご紹介いただきました!

『週刊読書人』2023年12月15日号の「2023年の収穫」にて、岩田規久男先生より「今年印象に残った3冊」の一つとして拙著『本当に役立つ経済学全史』をご紹介いただきました!高く評価していただき大変光栄です! ちなみに、岩田先生ご推薦の他の2冊はブランシ…

田中秀臣先生より動画をご紹介いただきました!

田中秀臣先生から今年の動画&SNS発言(日本語のみ)ベスト5の一つとして、テンミニッツTV配信の動画、柿埜真吾「「ヒトラーの経済政策はケインズ的で大成功だった」は大嘘」をご紹介いただきました!大変光栄で嬉しく思います! ご紹介いただいた動画では…

「資本主義のど真ん中」

以下のようなポストを見かけました。19.2万回表示されていて、1663件も「いいね」がついていますから、それなりに読まれているのでしょう。 奴隷関連の調べ物を。ここ数年で一気に増えつつある文献の頁を繰れば繰るほど、資本主義のど真ん中に奴隷制が鎮座し…

グラフの正しい読み方

著名な評論家の池田信夫先生のブログで「大分岐から大収斂そして再分岐へ」と題された興味深い記事を見かけましたので、コメントさせていただきます。この記事の中で池田先生は、IT革命による情報コストの低下で世界的な格差の収斂が起きているとし、日本の…

自称愛国者はCMに夢中

自称愛国者の皆さんの排外主義的言動を見ていてつくづく疑問なのは、それが何の役に立つのかです*1。ここ最近では、Xでアンミカさんにかかわるワードが何度もトレンド入りしていましたが、日本が抱えている最大の問題は日清のCMなのでしょうか?彼らが常日頃…

集団懲罰

10月7日のテロとそれに続く戦争では、集団懲罰の発想が大流行しています*1。ジェノサイドや集団懲罰を支持する主張は古くからある考え方です。とはいえ、古代の思想家の中にも、そうは考えなかった人がいたということを知るのは慰めになります。 〔神がソド…

ベネズエラの21世紀の帝国主義

社会主義者は、資本家が戦争を起こすという陰謀論を唱えることが少なくありません。極左の政治学者によれば、イラク戦争をはじめとする米国の中東への介入も石油支配を目的とした戦争であるそうです。 もしそうした説明が本当なら、戦争は資本主義の産物で、…

嫌韓ヒステリーは百害あって一利なし

12月6日から始まったアンミカさんの「日清のどん兵衛」シリーズのウェブCMが一部の極右の方に攻撃されています。XにこのCMに関係するトレンドが毎日のように出ているのは本当にうんざりしますし、これこそまさに日本の恥です。 アンミカさんが「日本は世界の…

被害者責任論を説く人たち

最近のSNS上の国際政治の専門家への中傷や嫌がらせは度を超えています。議論の内容以前の問題として、意見の違う相手だからといって、嫌がらせをしたりしてよいはずがないでしょう。 年度末に向け、いくつも重要プロジェクトが控えていますが、悪質な嫌がら…

”正義”の暴走

当たり前すぎて本来は言う必要もないことのはずですが、意見の相違は犯罪を正当化しません。自分の気に入らない人間に物理的な危害を加える人は本人が自分のことをどう思っていようと単に犯罪者です。 人間の考え方は様々ですし、物事の判断は難しいこともあ…

山本一太群馬県知事より拙著『自由と成長の経済学』のご紹介をいただきました!

12月1日の日本経済新聞「リーダーの本棚」のコーナーにて、群馬県の山本一太知事より、斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』とともに拙著『自由と成長の経済学』を紹介していただきました。ご紹介大変ありがとうございました! 群馬県知事 山本一太氏 - 日本…

週刊読書人インタビュー『本当に役立つ経済学全史』刊行を機に

少しお知らせが遅くなりましたが、『週刊読書人』11月24日号にて、『本当に役立つ経済学全史』の刊行記念インタビューを掲載していただきました。経済学における自由主義の伝統の重要性、マルクスと古典派の関係、陰謀論的なナチス礼賛言説の危険性など、拙…

「道徳的怪物」について(3)

前回の投稿で、イスラエルとハマスの停戦支持を明言しなかったサンダース議員*1を「道徳的怪物」と罵倒するフィンケルスタイン氏とは何者なのか簡単にお話ししました。一言でいえば、彼は無差別テロを肯定し、テロ組織に強い共感を寄せる危険人物です。イス…

「道徳的怪物」について(2)

前回の投稿に続き、イスラエルとハマスの「停戦」に反対したサンダース議員をmoral monster*1などと非難したフィンケルスタイン氏の投稿を取り上げます。 Norman Finkelstein responds to Bernie Sanders' grotesque depravity in refusing to demand a ceas…

「道徳的怪物」について(1)

バーニー・サンダース上院議員は社会主義を掲げる著名な左派政治家ですが、CNNとのインタビューでイスラエルとハマスの「停戦」を支持しなかったとして、左派から大変な批判を浴びています*1。反イスラエルで知られる政治学者のノーマン・フィンケルスタイン…

『本当に役立つ経済学全史』紹介動画のご紹介

先月発売した拙著『本当に役立つ経済学全史』、おかげさまで大変好評です。田中秀臣先生、片岡剛士先生をはじめ、紹介してくださった皆様、温かい感想を書いてくださった皆様に心より御礼申し上げます! この度、テンミニッツTVで紹介動画を作っていただきま…

クリスタルナハト

11月9日~10日は、1938年のナチスによるユダヤ人迫害、いわゆるクリスタルナハト(水晶の夜)から85年の節目に当たります。ガザでの軍事作戦を巡りイスラエルへの批判が高まっていますが、この機に乗じて反ユダヤ主義を煽ろうとしている勢力があることにも注意…

書評掲載(10/24)

この度、『週刊金融財政事情』に、岩田規久男著『経済学の道しるべ』(夕日書房)の書評が掲載されましたのでお知らせします。是非ご覧いただければ幸いです! 『経済学の道しるべ』 | きんざいOnline (kinzai-online.jp) SNSやメディアには経済に関する情報が…

No Place for Antisemitism

10月7日のテロ組織ハマスによるイスラエルへの無差別テロはショッキングなものでした。多くの一般市民が残忍な方法で殺害されたことには憤りを禁じ得ません。残念なことに、日本でも欧米でも、パレスチナ問題を理由に、今回のテロを肯定したり容認したりする…

『本当に役立つ経済学全史』刊行のお知らせ

お知らせが遅くなりましたが、近日中に新著を出しますので、ご紹介させていただきます! 本当に役立つ経済学全史 (テンミニッツTV講義録) | 柿埜 真吾 |本 | 通販 | Amazon テンミニッツTVでの講義をもとにした経済学史の入門書です。重商主義から古典派、マ…

書評掲載(10/6)

仕事が非常に慌ただしくご紹介が遅れましたが、週刊読書人10月6日号に、クリストファー・ブラットマン著『戦争と交渉の経済学 人はなぜ戦うのか』(草思社)の書評を掲載させていただきました。*1。ぜひご一読いただければ幸いです! 山形浩生さんと片岡剛士…

公平性の見本(?)

相手がヒトラーやスターリンならともかく、他人の誕生日や命日といった記念日にわざわざその人を悪く言うのはよほどです*1。良識ある人はそういうことはしないものではないでしょうか。 以下の岩波書店の投稿は少し前のものですが、『ショック・ドクトリン』…

「政府支出」の意味

先日、評論家の池田信夫先生の次のようなツイートを目にしました。前々から気にはなっていたのですが、誰も指摘されないようですので、一言コメントすることにします。 こういうバカも多いが、減税もバラマキなんだよ。ケインズ理論では 政府支出=歳出-税…