柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

被害者責任論を説く人たち

最近のSNS上の国際政治の専門家への中傷や嫌がらせは度を超えています。議論の内容以前の問題として、意見の違う相手だからといって、嫌がらせをしたりしてよいはずがないでしょう。

こんなことをするのは明白な犯罪行為で断じて許されません。こんな嫌がらせをして平気な人がいることにはぞっとします。

まだ犯人が誰か特定されていないので断定は控えますが、おそらく池内先生や東野先生の国際情勢に関する意見に不満を持っている人がやったのでしょう。ともかくその背景が何であろうと一切弁護の余地がありません。自分の動機が高尚である(と本人が思っている)ならば何をしても許されると思い込んでいるのかもしれませんが、全く言語道断です。それは正にテロリストの論理です。

一部の方は「池内先生や東野先生の主張がおかしいからだ」とか、「そうされても仕方ない理由がある」、「この程度で騒ぐな」といった”被害者責任論”を唱えておられるようです。それは「ウクライナが脅威を与えていたからロシアにはウクライナを侵略し、マリウポリを火の海にする権利があった」とか「ハマスの無差別殺人テロは占領者イスラエルへの正当で偉大なレジスタンスだ」とかいった議論と一体どこが違うのでしょうか*1

ハマスのテロに対し過激な報復を唱えている一部の人たちの振る舞いが正にそのテロリストと似通っているのは実に皮肉です。党派性にとらわれすぎ、常識的な判断ができなくなっているとしか言いようがありません*2

*1:しばしば極右の方は「加害者の人権を過剰に保護するな」などと主張しますが、どういうわけか自分が加害者ではないつもりのようで不思議です。加害者であっても当然人権はありますが、犯罪にはそれに応じた処罰があります。

*2:今回の事件の被害者がもし仮に極右の誰かだったと想像してみてください。極右の方々は言論弾圧に強い憤りを感じたはずです。それは全く正当です。誰が対象であってもこういうことをするのは絶対に許されないことです。党派性を理由に事件の判断が異なるのはおかしいことに気が付いてほしいと思います。少し前になりますが、日本の音楽フェスに出演した際、胸を触られる被害を受けたDJ SODAさんの事件の時も多くの極右の方が被害者責任論を唱えました。カメラに映っており事件があったことが完全に明白であるにもかかわらず、挑発的な格好をしていたから本人が悪いなどと言ったり、反日だなどと言いがかりをつけたりと大騒ぎになりました。仮にもし事件の被害者が日本人女性で、事件が韓国で起きていたら、どう反応したでしょうか。党派性によって行動し、単なる犯罪行為を正当化するのは愚かしいことです。