自称愛国者の皆さんの排外主義的言動を見ていてつくづく疑問なのは、それが何の役に立つのかです*1。ここ最近では、Xでアンミカさんにかかわるワードが何度もトレンド入りしていましたが、日本が抱えている最大の問題は日清のCMなのでしょうか？彼らが常日頃大事だと言っている「国益」にアンミカさんのCMの放送が一体全体どうつながっているのかは理解困難です。アンミカさんのCMが中止されたら、じゃあ、それでどうなるんでしょう。日本の景気の行方、防衛増税の阻止、政治資金問題、ウクライナ情勢、中東情勢*2等は、自称愛国者の皆さんにとっては日清のCMに比べればどうってことはないのでしょうか。
前の投稿でも指摘した通り、アンミカさんが「密入国した」という話は、元々、TV番組のアンミカさんの半生の再現VTRを曲解したネトウヨの噴飯物のデマがきっかけです。純真な子供ならともかく、テレビの再現VTRと現実の区別がつかないとは、本当にお気の毒というしかありません。この騒動が起きる前に、アンミカさん自身は11月21日のThreadsの投稿で「密入国したって本当ですか」という質問に答えて「そんなわけないじゃないですか。この噂はどこからきたのか私も不思議でなりません！！」と述べ、はっきりこのデマを否定しています。
「密入国は本人が言ってるんだから事実」*3などと主張していたネトウヨの皆さんは、「本人が言っている」などというのが事実無根のデマであることがわかると、今度は怪しげな統計やら古い新聞記事やらを引っ張り出して懸命に自己正当化を試みています。それだけの労力をもっとまともなことに使えばずっといいと思うのですが、韓国に夢中で気になって気になって仕方ないんでしょうね*4。
誤解させる再現VTRを出したテレビが悪いなどと責任転嫁をしている方もいますが、例のVTRを見て、密入国なんておかしなことを思いついたのは現実とファンタジーの区別がつけられないごく一部の極右だけです。放送時点でもその後も、おかしな偏見を持っていない常識ある視聴者は誰もそんなことを考えませんでした。ドラマ『大奥』を見て、「徳川将軍は女性だったと誤解した」、「偏向報道を糺せ！」などという方がいたら皆さんはどう思うでしょうか。こういった抗議はそれと殆ど同レベルです。そんな抗議を真面目に取り扱う必要がありますか。
自称愛国者のこれまでの言動からわかるのは、彼らは他人を憎悪し貶めるいじめでストレスを解消しているだけであって、実際には日本の安全保障とか国際的地位とかそういったことには全く関心がないのだということです*5。こういった欲求不満の無責任な人たちのデマはそれこそ日本の国益を損なう最たるものです。
今年は1923年の関東大震災からちょうど100周年ですが、震災直後には朝鮮人暴動のデマが流れ、デマを本気にした人たち*6によって数千人の朝鮮人が虐殺される事件が起きています*7。デマを無責任に拡散することの恐ろしさをもっと自覚していただきたいものです。
*1:そういう行為は人権侵害でそもそも言語道断ですが、自称愛国者の皆さんの関心に合わせてこの投稿では、国益を第一に議論します(まあ人権を無視した国益などないと思いますけれども)。
*2:Xのトレンドを見る限り、自称愛国者の関心事は中東情勢でもハマスでもイスラエルでもなく池内先生です(！)。
*3:2023年12月9日の池田信夫氏のTwitter, 現在は削除済み
*4:韓国は、北朝鮮の脅威にさらされている民主主義国で日本の準同盟国であるはずですが、ネトウヨの皆さんは日韓関係を壊したくて仕方ないのでしょう。きっとそれはどこかの国の独裁者の利益にはなるでしょうが、多分日本の国益とは関係がなさそうです。
*5:ウイグルにルーツを持つ方の当選を誹謗中傷で阻止したら、日本の国際的地位が高まるのでしょうか？DJ SODAさんの痴漢被害を正当化できたら、国益に資するんでしょうか？日本に帰化された方を罵り、「国に帰れ」などと罵倒すれば、日本が好きな人が増えるのですか？
*6:当初は警察や軍隊もデマを信じ、虐殺に加担しています。
*7:朝鮮人だけでなく、中国人、社会主義者・無政府主義者など日本社会から異質とみなされたたくさんの人が殺されました。最近一部の歴史修正主義者が「朝鮮人暴動は本当にあった、虐殺ではなく、日本人が暴動と戦って自衛しただけだ」などと主張していますが、彼らのソースは事件直後にメディアが流した無責任なデマ記事であり、その後虚偽だったことが判明しているものです。当時の新聞には富士山が噴火したとか首相が暗殺されたとか荒唐無稽なデマがあふれていました。朝鮮人虐殺否定論は恣意的な文献の引用に基づく巧妙な印象操作に過ぎません。朝鮮人虐殺否定論の荒唐無稽さと欺瞞性については次の著作が説得的です。TRICK トリック 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち | 加藤直樹 |本 | 通販 | Amazon
