柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

ミル没後150周年

2023年はジョン・スチュアート・ミルの没後150周年でしたが*1、今年は特に自由の意義を改めて考えさせられた1年でした。

2020年の米国大統領選後から顕著になっていた現象ですが、今年はネットを中心に一部の過激な集団が根拠のないデマをもとに迷惑行為を繰り返したりする現象が大きな問題になりました。自民党のえりアルフィヤ議員へのバッシング、LGBTをめぐる様々な問題に関する極右と極左の過激な扇動やデマ、ALPS処理水の海洋放出への風評加害、最近ではタレントのアンミカさんへの誹謗中傷*2が良い例です。

こういう運動は昔からあって、極左も相変わらず過激ではありますが、最近特に目立つのは陰謀論的な極右の排外主義的言動です。排外主義の問題はこのブログでも何度か取り上げましたが、アンミカさんへの誹謗中傷を取り上げた記事田中秀臣先生からXでご紹介をいただき、おかげさまで多くの方に読んでいただいております。

最近では右も左もキャンセルカルチャー花盛りで、特定の「正義」を振りかざせばどんな誹謗中傷も許されると思いこんでいる困った人たちが少なくありません。実のところ、こういった人たちは、崇拝している教祖が違うだけで、不確かな噂を鵜呑みにして暴走する言論弾圧集団という点では右でも左でも変わりません。

田中先生のご指摘のように、ミルは権力による自由の侵害だけでなく、画一的な世論の専制も自由を脅かしうる脅威ととらえていました。自由は上からの弾圧だけでなく、下からの言論弾圧によっても脅かされるものだという視点は極めて重要です。自由で多様性のある社会を守っていくには絶えざる努力が必要です。

*1:何か書こうと思いつつ、1年が過ぎてしまいました。ミルの大ファンとしてはちょっと情けないですが(笑)、まあ、特に何か記念日ではなくても、ミルの古典『自由論』は常に読み返していきたいものです。

*2:相変わらずしつこいですが、お正月ぐらい静かにしましょうよ!