柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

右派のダブルスタンダード

さて、前回の投稿では左派のダブルスタンダードを批判しました。では、右派の方は立派なものなのかといえば、言うまでもありませんが、それも決してそうではありません。今回の島田雅彦氏のテロ肯定発言や左派知識人の「あべしね」といった暴言に抗議していながら、自分自身がそれ以上に酷い言葉で人権侵害をしている方が実に多いですし、誰それを処刑しろとか**人は劣った人種だ、○○人を一掃しろなどと平気で書いている方すら少なくありません。左派が流すデマには敏感ですが、それでいて自分自身はもっとお話にならない陰謀論のデマを流しています。誰それは「中国のスパイ」とか「親中派*1だというのは極右の皆さんのお気に入りのフレーズですが、何の根拠もなく使われています。

例えば、防衛費のGDP比2%を公約し、安保三文書を改定し、日米同盟を強化し、離任する中国大使との面会を拒否した岸田首相が「媚中」の「親中派」であるというのは普通なら理解できないでしょう。彼らの「親中派」とは要するに「嫌い」という以上の意味がありません。単にどんな機会であれ中国を貶めたいというだけでしょう。

極右の方はことあるごとにウイグルチベットの人権問題を持ち出し中国を糾弾していますが、それでいていざウイグル系の方が立候補すると差別的な言動をしてはばかりません。何度も繰り返し書いている通り()、えりアルフィヤ氏はウイグルの人権問題に強い関心を持っていますし中国政府に対して極めて批判的な方ですが(これも何度も言いますが、ブログや候補者アンケートを見れば自明です。*2)、両親が日本で生まれていないからという理由で、根拠もなしに中国のスパイなどといわれ、聞くに堪えない罵倒を繰り返し受けています。そういうことをして恥じない方々が人権について何か言っても果たして説得力があるでしょうか。

もちろん、ここで述べたのは一般的な傾向であって、右派でも左派でも、一貫性をもって発言されている立派な方がいることは言うまでもありません。それにしても、そうした方が多いとは決して言えないのが現状です。

右派だろうと左派だろうと、相手が誰であろうと「死ね」とか「殺せ」とか使うべきでない言葉を使ったり、人種差別を煽ったりするのはやめるべきです。殺されていい人間はいませんし、差別で傷つけられていい人間もいません。思想信条にかかわらずです。身内ではない相手については、少しでも気に入らない点があったり失言と受け取られる発言があったりすれば袋叩きにして社会的地位を失わせようとするのに、身内であれば何を言っても容認し、根拠のないでたらめで他人を中傷して恥じない。これでは、普通の方がついてこなくても当然でしょう。

*1:そもそも「親中派」を悪のレッテルのごとく使うのもどうかと思います。中国共産党政府と戦い、中国人の人権を守るために活動している方は「親中派」でしょうか?それとも「嫌中派」でしょうか?省略した言い方としては仕方ないのかもしれませんが、これがあまり役に立つレッテルでないのは確かです。

*2:一例を挙げると、「欧米は、中国の新彊ウイグル地区での人権弾圧を受けて、中国への制裁措置を発動しています。日本政府が中国に制裁を発動することに賛成ですか、反対ですか」と聞かれて、「賛成」と明言しています。読売新聞の2022年参議院選候補者アンケート(英利アルフィヤ 参議院選挙・開票結果2022(比例代表) : 読売新聞 (yomiuri.co.jp))をご覧ください。