柿埜真吾のブログ

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えりアルフィヤ氏への不当な差別に反対します(2)

前回に続き、えりアルフィヤ氏への誹謗中傷について取り上げます。極右的言動をする方の中には、えりアルフィヤ氏が選択的夫婦別姓を支持している*1ことを執拗に攻撃する方がたくさんいます*2

しかし、選択的夫婦別姓に賛成か反対かにかかわらず、選択的夫婦別姓への賛成を理由としたえりアルフィヤ氏への攻撃的な批判は全く理不尽です。選択的夫婦別姓自民党以外の主要政党が賛成し、公約にしていますし、自民党の議員でも導入に積極的な議員はたくさんいます。例えば、菅義偉前総理も導入に積極的な発言をされています*3

そもそも、NHK候補者アンケートを見れば、千葉5区補選に出馬している候補の多くが選択的夫婦別姓に賛成であることがわかるでしょう。

千葉5区で有力な候補は立憲民主党の矢崎堅太郎氏と自民党のえりアルフィヤ氏の2人ですが、矢崎堅太郎氏は選択的夫婦別姓に賛成で、同性婚クォータ制にも賛成です。えりアルフィヤ氏の立場は同性婚に関しては「どちらかといえば賛成」、クォータ制に関しては「どちらかといえば反対」で、むしろ矢崎堅太郎氏より慎重な立場です。

他の候補も選択的夫婦別姓に賛成であるにもかかわらず、えりアルフィヤ氏だけを執拗に攻撃する理由は人種差別ではないとしたら一体何でしょうか?たとえ選択的夫婦別姓に反対だとしても、彼女だけを激しく攻撃するのは常軌を逸しています。

主要候補のうち、日本維新の会の岸野智康氏だけは選択的夫婦別姓に「どちらかといえば反対」ですが、日本維新の会自体は選択的夫婦別姓を公約にしています。例えば、昨年の参議院選挙の公約には「維新は選択的夫婦別姓を実現し、結婚後も旧姓を用いて社会経済活動が行える仕組みを構築。時代に応じた改革を推進します」とあります。岸野智康氏は同性婚には「賛成」でクォータ制にも「どちらかといえば賛成」ですから、ジェンダー平等に関して、えりアルフィヤ氏と岸野智康氏は大体同程度と評価できるでしょう。要するにこの選挙区で選択的夫婦別姓の是非は最初から殆ど争点にはなり得ないのです。

出所:NHK候補者アンケート

出所:NHK候補者アンケート

出所:NHK候補者アンケート

なお、えりアルフィヤ氏が「今回の選挙では夫婦別姓賛成の主張を隠して選挙に挑んでいる」なる”批判”を展開している方を見かけますが、一体全体どこを見ておられるのでしょうか。どこにも何も隠してなどいません。NHKのアンケートに堂々と答えていますし、公約でも多様性を尊重することをしっかり訴えています。

多くの極右の方が何故か立憲民主党の矢崎堅太郎氏に投票するように呼び掛けておられますが、とにかく外国にルーツを持つ女性が議員になれなければ何でもよいのでしょうか。NHKの候補者アンケートでは、矢崎堅太郎氏は憲法改正、防衛費増額に反対で、彼らの主張とは正反対の左派の候補者です。候補者本人もそんな失礼な理由で投票されては迷惑でしょう*4

いろいろな考え方があろうとは思いますが、もしこうした事実を知らずに中傷を拡散しているなら無知を恥じるべきです。知った上でそうしているというなら、もう救いようがありません。他の問題はどうでもいいから、人種差別が最優先だと告白しているも同然です。

選択的夫婦別姓を支持している議員はたくさんいるというのに、なぜことさらに、えりアルフィヤ氏だけを問題にするのでしょうか。そういう態度は、候補者の政策を問題にしているのではなく、それを口実に差別的偏見を広めているに過ぎません。他の人も全く同じことを主張しているというのに、特定の属性を持つ人に対してだけはその主張を問題視し激しく攻撃する。これを醜い差別と言わずして一体何と言うのでしょうか。

*1:質問に答えてみた 選択的夫婦別姓について #2枚目はえりアルフィヤ #ヤ #参院選 #参院選2022 #自民党 - YouTube

*2:以前も書いた通り(過去の投稿記事をご覧ください)、そもそも夫婦同姓の強制は明治民法から始まったもので、日本の古い伝統でも何でもありませんし、選択的夫婦別姓は単に別姓を選びたい人には別姓を選ぶ自由を認めるというだけのことです。同姓を選びたい方は今まで通り同姓でいて構わないのです。なぜ選択の自由を認めただけで「日本が壊れる」とか「伝統が破壊される」などという大げさなことになるのでしょうか。夫婦同姓を強制している国は日本だけです。

*3:菅義偉前首相、選択的夫婦別姓「先送りすべきでない」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

*4:賢明にも矢崎堅太郎氏は今のところこういった極右の動きを黙殺しておられます。