柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

テロに断固たる姿勢を

今日、和歌山県衆院補選の選挙応援中の岸田首相に対して爆発物が投げ込まれる事件がありました。幸い首相は無事で、犯人も取り押さえられましたが、このようなテロ行為は民主主義に対する挑戦であり、決して許されることではありません。

昨年には参議院選挙中に安倍元首相が暗殺されるという痛ましい事件がありましたが、再び選挙中にテロが起きたことは重大です。再発防止策を早急にとる必要があるでしょう。安倍元首相の事件の場合は街頭演説中、今回の岸田首相の事件の場合は街頭演説前という違いはありますが、犯行の状況は極めて似ています。

再発防止策を早急にとるべきです。日本の選挙運動は有権者と政治家の距離が近いのが特徴ですが、これは安全だった日本だからこそできたことです。諸外国では政策はメディアや会場を借りた集会で訴えるのが一般的です。不特定多数が候補者に容易に近づくことができるような形での街頭演説は本来は極めて危険ですし、このような事件が立て続けに起きた以上、今まで通り続けるのは困難ではないかと思います。少なくとも、今後はより厳格な交通規制や持ち物検査は不可欠ですし、国会議員や政府閣僚の演説についてはそれが難しいようならすべきではないでしょう。

安倍元首相の暗殺事件をめぐっては、統一教会問題の報道が過熱する一方、再発防止措置の議論が殆どなかったように思われます。旧統一教会への取り締まりは強化されましたが、それでいてテロの再発防止策については特段の措置が取られませんでした。

恐ろしいことですが、安倍元首相を日ごろ罵っていた方々の中には、テロを賛美するとは言わないまでも、正当化するような言動が少なくありません*1。「テロをすれば、自分に注目や共感を集めることができ、政治的主張が通る」という成功体験を与えるのは将来のテロを誘発することになりかねず極めて危険です。

今回のテロに対しては、犯行の動機を過剰に取り上げたりすることは避け、許しがたい行為に対して断固とした態度をとるべきです。犯行の動機が何であれ、民主主義への挑戦にはいかなる正当性もあり得ません。再発防止策を早急にとり、テロに屈しない姿勢をとることが不可欠です。

*1:安倍元首相の暗殺事件をめぐる言説については『自由な社会をつくる経済学』でも取り上げていますので、ご関心のある方は是非ご覧いただければ幸いです。