柿埜真吾のブログ

日々の雑感を自由に書きます。著書や論考の紹介もします。

見出し詐欺にご用心(2)

ネット番組は見てもらえなければ話になりません。テレビや新聞、雑誌等もある程度同じことが言えますが、無数の番組がひしめいているネットの宣伝はより過激になりがちです(もちろん、良心的なメディアもありますが)。

ネットメディアの宣伝文句やタイトルなどは、しばしば出演者の意図とは無関係に番組側がつけています。出演者はそこまで確認しておりませんし責任を持てません。

特に二次利用の場合はなおさらです。ネット上に出演者の意図しないような刺激的な見出し、誤解を招くような見出しが氾濫しているのは日常茶飯事です。

私自身とりわけ困惑しているのは「地球温暖化は作り話」であるといったタイトルで切り抜き動画を作っている方がおられることです。私が温暖化否定論者ではないのは私の書いたものを読んでいただければ自明だと思います。これまでそのようなことを話したことも書いたことも一切ありません(当該動画でも私は自分が温暖化否定論者ではないとはっきり言っています)。

もちろん、温暖化を名目にした再生エネルギー産業への補助金政策や極端な脱炭素政策、まして脱成長政策は温暖化対策としても効果が乏しいだけでなく、途上国の貧困問題を深刻化させ、食糧、エネルギー問題を悪化させるリスクがあります。それは著書や講演でもお話ししている通りです。しかし、これは「温暖化が嘘」といった主張とは全く違います。私は温暖化の被害が現実に存在することを強調していますし、災害対策や炭素税などの合理的な温暖化対策を支持しています。

おそらくこういう宣伝をする方は、私の主張に共感されて、「ショッキングなタイトルの方がより多くの人が見るだろう」と思い、ある意味で善意でされているのでしょう。しかし、不正確であることを知りながら間違った宣伝を意図的にするのは控えめに言っても詐欺的行為であり許されることではありません。

当然ながら、こうした宣伝は私の信用を大きく損なうものですし、合理的な温暖化対策の議論を妨げるものです。言論を取り締まるような真似はしたくありませんが、常識があればこういうことはされないと思います。

また、誰それは「馬鹿」「死ね」といった激しい言葉で他人を攻撃するようなタイトルや宣伝も、人をひきつけやすいらしく、そうしたタイトルの動画も目につきますが、他人に対する安易なレッテル張りや戯画的な単純化から得られるものは何もないと思います。私自身は誰に対してであれそういった言葉を責任ある文章で使うのは非常識であると思いますし反対です。これはポリティカルコレクトネスとかそういった問題ではなく良識の問題です。念のためお断りさせていただきます。